俺は何も考えず、海外に行きたい

◆短編集の販売まわりの作業が一旦落ち着いた。嬉しいことにSNSのDMなどで、買ってくれた方がそれぞれの感想を寄せてくれる。●●という話が面白かったとか、怖かったという感想を聞くと、とても幸せな気持ちになる。プロの作家でもない男が、インディー究極完全体グレートモス(a.k.a インセクター羽蛾)さながらな状況で書いて、自分の手で印刷し、手渡しや郵送で届ける作業はとても楽しい。計50部も売れてないので、そんなことを言う位置にいないのは明白だが、誰にも忖度をしない場所で、媚びることがない作品はリアルに感じられて、どんなものでも気になってつい触れてしまう。いつまでもこんな感じで執筆業もどきを続けられたらいいなと考えている。

 

アコースティックギターを買った。僕はギターから音楽を始めてしまうと、機材だけ揃えて聴いてみると腕はないみたいなファッションギタリストになることはわかっていたので、ドラムというパートを本能的に選択した。そいでもって、ドラムを日常的に続けるようになってもうかれこれ12年になる。まだ上達の影は見ることはできないけれど、幸いなことに演奏を他人に観てもらう機会を持つことができている。

 なんで急にアコースティックギターなんか買ったかというと、高校の頃に凄く好きでよく聴いていたジョン・メイヤーの「In Your Atomosphere」のビデオを最近なんかの機会で観た後に、気づいていたらデジマートを見ていたという次第です。(LAにあるノキアシアターのライブがYouTubeあるので、よければみてください、めちゃいいです。)まあ少しずつ好きな曲を弾けるようにしながら、簡単な曲を自作できるようになったらいいなと思いながら、オルタネイトに苦しんでいます。なんだこれ、やけに細けえ動きだな。

 

◆最近、マーティン・スコセッシの映画を集中して観ている。同じ監督の作品を立て続けに観ることによって体系的にその監督を知ることができる気がしないでもない。「カジノ」「グッドフェローズ」辺りも「シャッターアイランド」「ディパーテッド」などとテイストが妙に違うので、いろいろと手広い監督であることが素人目にもわかる。僕は70年代後半〜90年初頭のデニーロが出ていたスコセッシ作品はまさに文学クラシックスに触れている気がして、すごく良い気分で観ることができる。ジョー・ペシが木のバットで顔をぐちゃぐちゃにされていても、いい感じの虚構具合とコミカルさがあって笑ってしまう。

 僕は映画もその傾向があるのだけど、音楽を体系的に聴いてこなかったので、他人に話せるジャンルと言えば、USインディー(それもごくわずかの)界隈くらいな気がする。それ以外のジャンルは散逸して聴いてしまっているので、「歴史」や「教養」という意味合いで伝えることは何もないだろう。体系的に聴くという行為は些か不健全な気がするけれど、他人と話をするときなどには結構役に立つんだよということを、三十歳になってからふと感じる。